今回の緊急事態宣言が不動産取引に与える影響(不動産賃貸)
各種報道によりご存じの方が多いと思いますが、1都4県(東京都、神奈川県、千葉県、埼玉県)で1月7日から9日迄のどこかで緊急事態宣言が発せられることになりました。本日は、今回の緊急事態宣言が不動産業界や取引に与える影響について考察します。
あくまでも「私の個人的な想定」であることをお断りしておきます。
賃貸仲介を生業とする、街中の不動産会社に与える影響
春先は異動の季節です。毎年1月から3月にかけて、転勤、結婚による新生活開始、大学進学による下宿先探し、卒業による退去等が行われます。この時期は空き物件が増えることから、より良い住環境を求めて引越される方が増えます。このため、不動産賃貸を生業とする不動産会社は、1年の間で最も忙しくなります。
昨年の春は「外出は危険」というムードが漂ったことから内見の数が激減しました。しかし、昨年の緊急事態宣言が発令されたのは4月であり、お客様が激減したといっても、不動産会社の倒産を招く程には致命的ではなく、何とか持ちこたえた会社は多いです。
しかし、今回の緊急事態宣言は、春先の繁忙期を直撃します。1月8日または9日から約1か月を予定しているようですが、感染状況が改善しなければ延長も考えられるとのことであり、場合により3月まで継続されることが考えられます。賃貸を生業としている不動産会社の多くは1月~3月の売上げで4~12月における支出を賄っています。特に賃貸仲介を生業としている不動産会社は致命的な損失を被る可能性が高いです。
賃貸仲介に対する影響
今回の緊急事態宣言により飲食業が受ける打撃は相当なものであり、多くの店舗が倒産または廃業し、多くの従業員が解雇されることが避けられません。特に飲食業従事者の約8割を占める非正規雇用の従業員が多く失業することが想定されます。解雇されなかった場合でも賃金カット等をされることが容易に想定されます。
残念ながら、家賃を支払えないことを理由とした退去が急増し、空き部屋が増えると予想しています。特に賃料が高めの賃貸住宅において、退去が多く発生すると思われます。
収益用不動産のオーナーにとっても一大事です。賃下げの希望が出ますし、家賃を滞納する入居者が増えると思われます。
退去される方は、より安い賃料の賃貸住宅に引越することを希望します。このため、賃料の安い賃貸住宅に対する需要は急増しますが、都区内では数が限られます。このため、郊外に移転される方が増えると思います。
賃貸物件の空室では、入居先を探されている多くの方が毎日のように内見しています。内見のために物件に出向いたところ、他の不動産会社の他のお客様が内見しているために待たされた経験がある方がいらっしゃると思います。内見の際に、不動産会社の従業員や見ず知らずの他人と接触することはどうしても避けられません。このため、内見をしたくないとお考えになる方が増えると予想しています。
このため、「良いところがあれば引越したい」という程度の理由で不動産会社を訪問する方は激減するでしょう。
まとめると、以下の通りです。
相場よりもやや高めの賃料を設定している物件において、多くの空室が発生する
家賃を滞納する居住者が増える
賃料が多少高くても構わないという入居希望者には選択の幅が広がる
郊外へ移転する方が増える
賃料が安めの物件は数が少なくなる
賃貸仲介を生業としている不動産会社の中には持ちこたえられない会社が出てくる
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