年末年始が不動産探しに適さない理由

年末年始における休みの間に不動産をじっくり探したいとお考えの方がいらっしゃると思います。中には、「内見から契約までを年末年始の休みの間にに行いたい」と要望されるお客様もいらっしゃいます。

しかし、賃貸物件、売買物件のいずれも、年末年始における不動産探しはお勧めしません。その理由は以下の通りです。

1.賃貸物件の場合
★理由その1
不動産探しに適さない理由の一つは、物件の数が少ないからです。通常、賃貸物件の解約申し入れは1月または2月に行われます。普通賃貸借契約の場合、賃借人が解約の申し入れを行う場合は、退去日の1~2ヶ月前までに解約の申し入れをする必要がある旨が賃貸借契約書に記載されています。

退去後に現状回復工事、リフォーム、ハウスクリーニングを行い、その後に賃借人を募集します。不動産会社において、オーナー様から預かる物件の数が最も多くなるのは2月および3月です。

入居を検討されるお客様の御要望は多岐にわたりますが、年末年始は物件の数がまだ少ないので、御要望を満足する物件を探せることは少ないです。

事情が許されるのであれば、2月以降に物件を探されることをお勧めします。

★理由その2
次の理由としては、不動産物件の内見から契約までのプロセスを不動産会社1社のみで完結できることが少ないことがあげられます。

駅から徒歩5分以内、アイランドキッチンが欲しい、お風呂は追い炊きができなければダメ、最上階がいい、角部屋限定、女性専用、バルコニーは南向き限定、ペットを3匹飼育できるマンション、最低でも1坪以上の浴室、シャワー式トイレ付き、宅配ボックスがなければダメ、自分の希望条件を全部満たす家賃○○万円以下のマンション...

様々なご要望があります。

自社でお預かりしている物件だけでは、入居を希望されるお客様の御要望を満たす物件を探せることが難しくなっています。

自社がお預かりしている物件で満足していただけない場合は、他社に応援をお願いすることになります。その際にはレインズを用いて検索することが大半です(東京23区内の場合)。

ちなみに、レインズとは宅地建物取引業者および金融機関のみが参照できる、不動産情報の検索サイトです。一般の方が参照することはできません。

東京都23区内で不動産業者が賃貸物件を検索する際にはレインズを利用することが主流です。しかし、不動産会社同士でメールやFAXを用いた情報交換を行い、ここで得られた情報のみを利用し、レインズをあまり利用しない地域があります。また、主にアットホームの情報を利用する地域もあります。

年末年始は、システムメンテナンスのためにレインズが停止します。このため、自社が直接お預かりしている物件以外の物件情報をお客様に提供することが極めて困難であり、内見もできません。

★理由その3
三番目の理由は、入居審査が困難であることがあげられます。

この年末年始はコロナ禍であることから帰省や旅行を自粛される方が多いとは思いますが、「入居審査や契約は正月明けからにして欲しい」と頼まれるオーナー様は多いです。「大家業は仕事であるから年末年始は休みたい。」とお考えなのでしょう。サブリース形式の賃貸物件を除き、入居審査は不動産会社だけではなく、オーナー様を交えて行うのが通常です。

また、保証会社による入居審査を行う物件では、入居審査を通過することを条件としてオーナー様が入居を許可する物件がありますが、年末年始は入居審査を行わない保証会社が多いです。

年末年始は入居審査が行えないので、賃貸借契約の締結ができません。

2.売買の場合
★理由その1
売物件の場合、自社が預かっている物件だけでお客様が満足されることはほとんどありません。このため、ご紹介する物件はレインズを用いて検索することがほとんどです。

しかし、レインズは年末年始に停止します。この期間に物件情報をお客様に提供することは極めて困難です。もちろん、内見もできません。

★理由その2
二番目の理由としては、売主様の協力を得られないことがあげられます。

「住宅を売る」という行為は、大半の方において一生に一度あるかないかの大イベントです。買付証明書を売主様に提出しても、ほとんどの場合に価格交渉などの条件交渉が必要なことから、売主様から「年末年始の休みが明けてからにして欲しい」と言われてしまいます。

★理由その3
三番目の理由としては、法務局や役所が閉庁していることがあげられます。

不動産売買を行う場合、登記簿謄本の確認、物件調査が必要です。売買の対象である不動産に対する法規制の内容、所有者に関する情報、不動産に設定されている権利、その他の調査が必要ですが、法務局や役所が閉庁する年末年始は物件調査を行えません。

また、所有権移転登記を行う際には登記原因証明情報という書類を司法書士に作成してもらい、法務局に提出する必要がありますが、年末年始は法務局が閉庁しています。

★理由その4
四番目の理由は、金融機関が閉店していることがあげられます。

年末年始の休業期間に高額な不動産代金を送金することは無理に近いです。さらに、ローンを利用する場合は、金融機関が開店していないと融資条件に関する打ち合わせすら出来ません。

金融機関が閉店しているため、不動産の購入を年末年始に行うことは困難です。