買ってはいけない収益物件(その2、土地の性質に問題がある物件)

前回の投稿の続きです。

5.道路から土地に行くために、水路を渡らなければならない土地に立地する物件
道路脇に水路があり、道路から土地に行く場合には水路の上に板を渡し、その板の上を通る必要がある土地も、この種の土地に該当します。水路の幅が数十センチメートル以下でも該当することがあります。

長年の間、道路脇の水路に水が流れていない状況が続いたために水路が土で埋められ、外観は道路と一体化しているために道路から土地にそのまま立ち入れる場合があります。しかし、公図に「水路」とか「水」と記載されている部分が道路と土地とを隔てている場合は、建築禁止とされることが多いです。

既に建物がある場合は再建築不可です。なお、条例により再建築可の場合があります。詳細は特定行政庁(市区町村役場)に問合せされることをお勧めします。

また、水路に隣接している土地は、次項の軟弱地盤に該当することがありますので、この点も注意が必要です。

6.軟弱地盤に立地する物件
建物の場所を公図で確認すると、以前は明らかに河川であったことがわかる土地があります。河川の改修工事により流路を変更し、従来からの河川を埋め立てた土地があります。

このような土地は沖積層で覆われていることがあり、地盤が軟弱であることが大半です。建物を建てると不等沈下をすることがあります。これを防ぐためには杭を打ち、杭が地盤に到達していることが必要です。

不等沈下は長年を経て少しずつ進行します。建物の壁や基礎部分に亀裂を生じさせ、建物の耐久性を著しく劣化させる原因になります。軟弱地盤上に立地する、杭を打たずに建てられた収益物件は価格が安くても購入するべきではありません。

7.崖の上、または崖下の物件
都道府県および政令指定都市ではいわゆる「がけ条例」を制定しています。崖であると認められる要件は条例により異なりますが、東京都(東京都建築安全条例)の場合は高さ2m以上、傾斜角30度を超えるものが「崖」とされます。

崖の高さをHメートルとします。この場合、崖の上、または崖下から2Hメートルの範囲内では建築物を建設することができないと定めている条例が多いです。自分の土地に自己居住用の住宅を建てる場合も例外ではありません。

ただし、擁壁工事をしっかり行い、この擁壁について建築確認をした場合は要件が緩和されます。ところが、この擁壁工事費用は高額であり、土地の価格を超えることがあります。高さ数メートル、幅10メートルの崖だと1,000万円前後になることがよくあります。

擁壁工事をした場合でも、年数を経ると劣化して亀裂が入ることがあります。亀裂が入ると大雨の際に擁壁が崩れ、そこから土が流失し、崖上の建物が傾くことがあります。この場合、崖上の建物の傾きを直す必要がありますが、収益物件の場合、これは容易ではありません。

さらに崩れた土砂が崖下の建物を押しつぶすことがあり、人的及び物的損害を与えます。収益物件の賃借人が死傷した場合、オーナーは損害賠償責任を負わなければならないことがあります。

擁壁を維持するためには定期的に点検を行い、必要に応じて修繕工事をしなければなりません。当然ですが、維持費が発生します。これを怠ったことから崖が崩れて人が死傷した場合、土地の占有者または所有者は損害賠償責任を負わされます。

2020年2月に神奈川県逗子市で発生した、崖下を通行中の高校生が死亡した事故では、崖の上に立地するマンションの区分所有者および管理会社が刑事告訴されています。おそらく、損害賠償請求訴訟も提起されると思われます。

崖の上、または崖下にある収益物件が築古である場合、建て替えの際に擁壁を造り直す必要が生じることがあり、この場合には多額の費用が発生します。このことからも、崖の上、または崖下にある収益物件は購入するべきでありません。

※明日の投稿に続きます。