収益用不動産が被災した場合の賃貸借契約(民法改正により大幅変更)

新しい民法が令和2年4月1日に施行されました。不動産に関する契約においても、取り扱いが大きく変わった内容があります。その一つは賃貸アパートや賃貸マンションが火災や台風などで被災し、居住できなくなった場合における賃貸借契約の取り扱いです。

変更点の概要

従来の民法では、賃貸アパートや賃貸マンションの部屋が焼失または被災して居住が不可能になった場合、賃貸借契約は自動的に終了するとされていました。賃貸借契約の目的を達成できなくなることからそのように扱われてきました。
被災を免れた、または被害が少ない部屋における賃貸借契約についても、建物全体の効用が喪失されたと見做される場合には、こちらも自動的に終了するとされていました。

建物の効用が喪失された状態とは、修繕して建物を利用し続けることが困難である場合や、修繕に要する費用が解体および新築の合計費用を超える場合のことを言います。

例えば、木造アパートの場合、建物の1部屋が火災により焼失し、他の部屋が残った場合でも、火災により建物の荷重を支える柱や梁が強度的に弱くなり、修繕して建物を利用し続けることが困難になることがあります。このような場合は、建物全体の効用が喪失されたものと見做されます。

また、柱や梁に特段の損傷がなく、屋根および天井の修繕のみで建物全体の修復が可能な状況である場合は、建物全体の効用が喪失されてはいないと見做されます。

令和2年4月1日に施行された新民法では、債権の取り扱いに関する部分が大幅に改正されました。特に危険負担に関する考え方が大きく変わり、当事者双方に帰責性がないのに履行不能に陥った事案では、債権者は契約を解除できることになりました。

旧民法では債権者(賃借人)の反対給付義務(賃料を支払う義務)も消滅すると定めていましたが、新民法では反対給付義務は消滅しないものの、反対給付義務の履行を拒む(賃料を支払わない)ことを主張でき、さらに債権者(賃借人)は契約(賃貸借契約)を解除することができるようになりました。

長くなりましたが、要約すると、賃貸物件が被災した場合の賃貸借契約は、以下の通りになります。
旧法:自動的に終了
新法:終了しない。しかし、賃借人は賃料の支払を拒め、賃貸借契約の解除を主張できる

注意

令和2年3月31日迄に締結された賃貸借契約には旧民法が適用されます。同年4月1日以降に締結された賃貸借契約には新民法が適用されます。賃貸物件が被災した場合、賃貸借契約の契約締結日により、取り扱いが異なりますのでご注意ください。

契約日が令和2年3月31日以前:自動的に終了
    令和2年4月1日以降:終了しない。賃借人は賃料の支払を拒め、賃貸借契約の解除を主張できる

つまり、賃貸借契約を終了させるためには賃借人から解除の申し入れをさせることが必要になりました。