「支店や社員の数が多い不動産会社は安心」と思うのは間違い(賃貸編)

お客様から電話による問合せがありました。

「このあたりでワンルームまたは1Kの賃貸物件を探しています。お尋ねしたいのは、そちらの会社は支店がいくつあって、何人の従業員がいるのですか。大きいところでないと頼みたくないので。」

どこの不動産会社に依頼するかの基準を支店の数と従業員の人数に置いているようです。

「私の会社は目黒区内の本店しかありません。従業員もそれ程多くありません。」と答えましたが、これで話を終わらせるのではつまらないので「参考のためにおうかがいするので教えてください。支店がいくつあって何人の従業員がいれば来店されますか。」と尋ねました。

すると、「そうですね。最低でも支店が8つくらいあり、最低でも50人くらいの社員がいるところでないと頼めないですね。大きいところでないと安心できないので。」とお答えになられました。

東京都内で主に賃貸仲介を生業とし、多くの支店を設けて多くの社員を雇う会社は高額の店舗賃料(通常は貸店舗で営業しています)と人件費を支払い続けなければなりません。

宅地建物取引業法は、従業員が複数の場合は5名毎に1名以上の宅地建物取引士を置くことを義務づけています。従業員5名のうち、4名は無資格で構わないということになります。人件費を安くするためには、宅地建物取引士の人数をこの割合に近づけることが効率的であり、実践している会社は多いです。このような会社では、宅地建物取引士がお客様の相談を受けて説明するとか、内見に立ち会うことはほとんどありません。宅地建物取引士は他の4名の営業担当が成約させた賃貸借契約の重要事項説明と契約書の作成で手一杯です。

無資格の営業担当でも、経験豊富でお客様から信頼されている方は多くいらっしゃいます。しかし、紹介者がいないと、このような方に対応してもらえることは、まずないと思います。

お部屋の賃料相場がわからないとか、ペット飼育を希望されるお客様にペット飼育不可の部屋を紹介してしまい入居後に大家さんと揉める、鍵の交換を依頼されて代金をいただいたのに交換しない、壁クロスの貼りかえ(費用は大家さん負担)を条件に入居申込をしたはずなのに、大家さんから交換費用を請求された、などのトラブルがあります。とんでもない営業担当が多くいます。

大きい会社では、報酬を歩合制にしているところが多いです。このため、お客様に対して強引な営業手法で迫る営業担当が多いです。内見をするとその日の深夜に自宅を訪問し、入居申込書への署名捺印をすぐに行うように迫る輩が多くいます。

報酬が歩合制であるためか、仲間同士で助け合う社風が全く無いところが多いです。他の営業担当がミスばかりしているのを知っていても知らん顔です。泣かされるのはお客様です。

私の会社でも、大家さんから客付けを依頼された物件に対して、この手の会社がお客様を客付けしたのですが、この会社の営業担当は、当社が発行した請求書の金額を勝手に書き換え(大幅な値引き)た上でお客様に渡してしまいました。当然、契約時にトラブルが発生しました。

「報酬が歩合制であるため、どうしてもこの契約が欲しい。値引きを要求されたが大家さん側は承諾してくれそうもない。請求書の金額を書き換えよう。」と考えたのでしょう。

支店長にクレームを入れたところ、この営業担当を即日解雇。これで終わりにしようとしました。普通であれば謝罪するべきですが、支店長は「辞めたヤツのしでかしたことなので知りません。そちらは大家さん側の会社でしょう。そちらでお客様を説得するなり値引き(勝手に行ったのに)に応じるなりしたら良いでしょう。どうぞご自由に。」と言う始末です。

評判が良く気に入った物件があり、この物件の空室はその会社しか扱っていないのであれば、その会社に依頼するしかないでしょう。この場合には「やや難しい相談があるので、経験豊富な方を担当にして欲しい。」と言うことをお勧めします。それなりの経験がある方を担当にしてくれるかもしれません。

「支店や社員の数が多い不動産会社は安心」と思うのは、明らかに間違いです。