困った相談(その33、収益用区分マンションの管理費・修繕積立金が高く売却不能)

 相談の内容は、「収益用区分マンションの一室(区分所有権)を売却したいが、管理費および修繕積立金の金額があまりにも高額であることが障害になっている。どうしたらよいか。」というものです。

相談を受けた部屋は東京都区内ではあるものの、駅近とは言えない立地の単身者用1K(専有面積約20㎡)でした。 この部屋の賃料は7万円であり、金額は相場通りです。

 ところが毎月支払わなければならない管理費および修繕積立金は4万円超とのことであり、この金額は異様に高額です。 

管理費および修繕積立金が異様に高額な区分マンションの売却は極めて困難

 入居者から毎月7万円を徴収しても4万円超が管理費および修繕積立金に消えることになります。どこの不動産会社に相談しても 管理費および修繕積立金が異様に高額であることから「売却期間は年単位になります」とか「当社ではお引き受け致しかねます」と言われたとのことで、困り果てて私のところに相談に来られました。

 残額である3万円弱の中から固定資産税、都市計画税、室内設備の維持費を支払うことになります。さらに空室になった場合でも毎月4万円超の管理費および修繕積立金が発生します。次の入居者を募集するためには不動産会社に対する仲介手数料も必要です。このようなマンションを購入すると、たちまち大赤字に陥ります。

 相談者がこのマンションを購入した際における管理費および修繕積立金の合計は1万円台後半であったとのことです。ある年の年次総会において管理費および修繕積立金の大幅値上げが上程され、あっという間に可決されたとのことです。

 このマンションは単身者向けの部屋のみで構成されており、区分所有者の大半は賃料収入を得るために区分所有権を購入し、賃借人を入居させていました。管理組合の活動および建物の維持管理には無関心な方が多く、年次総会を開催しても誰も出席しないことがよくあり、管理組合が機能不全に陥っていたようです。複数の部屋を所有する方が管理組合の理事長に選任されていましたが、理事になりたい方が誰もいないことから理事長の独断で物事の大半が決まっていたようです。

 総会を欠席する方には総会決議に関する委任状を提出するように求めており、管理費等の大幅な値上げを決めた総会自体は合法的に成立しているとのことです。大半の所有者(組合員、各部屋のオーナー)は総会の議案として「管理費および修繕積立金の大幅値上げ案」が上程されていたにもかかわらず、よく考えずに委任状に機械的に署名捺印して返送したものと思われます。

 数年前から管理費および修繕積立金の滞納が続出していました。連絡がつかない、または支払いを頑なに拒否する所有者が多く、未納の管理費および修繕積立金が雪だるま式に膨れ上がったようです。

 このマンションにはエレベーターがあり、定期点検および保守費用が常に発生します。また、本来であれば大規模修繕を行わなければならない時期を過ぎているのに資金が不足しているために放置していました。

 その後、屋上の防水塗装膜が破損して最上階で雨漏りが生じ、外壁にはひび割れが発生し、直ちに修理しなければならない状況になったとのことです。理由はわかりませんが、建物全体の管理委託先である管理会社には相談出来なかったようです。理事長としてはやむを得ず管理費および修繕積立金を大幅に値上げする判断をしたようです。通常では考えられない事態です。

 相談者の物件を現状で売却することは非常に困難です。管理費および修繕積立金を引き下げないと、売れることはまずありません。

区分マンションを購入する際は、管理費および修繕積立金の納付状況の確認が必須

 区分マンションの場合、重要事項調査報告書を請求することにより管理費および修繕積立金の納付状況がわかります。当該部屋における納付状況だけではなく、マンション全体の納付状況もわかります。

 滞納者が多く、未納の金額が莫大なマンションは、立地が良くて価格が安い場合でも購入してはいけません。うっかり購入すると、大変な目に遭います。

未納の管理費および修繕積立金が雪だるま式に膨れ上がった場合

 管理費および修繕積立金を滞納しており、滞納額がかなりの金額に達している場合は債権額を確定した上で支払請求し、支払を拒否する場合はその部屋を不動産競売にかけて滞納額を回収することが考えられます。

 相談者は「管理費および修繕積立金の大幅値上げ案」が総会に上程される前に管理組合の活動および建物の維持管理に関心を持つべきであったと言えます。