家賃滞納者およびホームレスの救済を不動産会社に求められても...

 前回の投稿に「 賃貸物件のオーナー様、不動産会社としては家賃等の滞納歴がある方を入居させることはできません。賃貸保証会社(家賃保証会社) が入居不適格と判断して保証契約の締結を拒否する方を入居させることはできないのです。」と書きました。

 入居審査に関する内容の投稿を行うと、必ずと言って良いほどに以下のようなコメントや意見などが届きます。

・不動産屋ではなく賃貸保証会社が入居審査を行う理由がわからない 
・賃貸保証会社による入居審査は厳しすぎておかしい 
・入居審査なしにしてホームレスがない世の中にするべきだ。全ての人を救済しろ 
・オーナーは家賃で儲けているのだから家賃を払えなくても黙認しろ。不動産屋からもそのように伝えろ
・ホームレスを救済する気はないのか 
・ホームレスを生み出しているのは不動産屋であり社会悪だ

 いずれも当方宛に送られた内容です。法律を理解していない方、賃貸保証会社から保証契約の締結を拒まれた方、多くの不動産会社をあたっても入居を断わられている方、家賃を滞納したことから退去させられた方が投稿しているものと推察されます。 

 しかし、家賃を支払えない方およびホームレスの救済を不動産会社やオーナー様に求めるのは筋違いであり、上述した内容のコメントを投稿し、または意見を送られても何も変わりません。不動産会社には変える権限がないからです。 

 不動産業はいわゆる規制業種であり、法律に従った対応を求められています。後述しますが、民法等の改正により賃貸借契約を締結する際には、原則として借主が賃貸保証会社(家賃保証会社)との間に保証契約を締結しなければならなくなりました。そして保証契約を締結する際に賃貸保証会社による審査が行われます。

 審査の際には過去の家賃支払に関する履歴、クレジットカードの返済履歴などが参照され、滞納事案に対して代位弁済が行われた履歴が確認された場合は保証契約の引き受けが拒絶されます。

 賃貸借契約を締結する際に原則として借主と賃貸保証会社(家賃保証会社)との間に保証契約を締結しなければならなくなったのは「国策」によるものです。連帯保証人になることを引き受けたことが原因で破産に追い込まれる方が激増し、さらに連帯保証人の自殺が増加したことから民法等が改正され、令和2年4月より施行されました。

 「賃貸保証会社が入居審査を行う理由がわからない」 、「賃貸保証会社による審査が厳しい」等と言われても、不動産会社が変えることはできません。賃貸保証会社が行う入居審査は「国策」によるものであるからです。

「オーナーは家賃で儲けているのだから家賃を払えなくても黙認しろ」 との主張がありますが、家賃滞納者が増えるとオーナー様が破産します。私の周囲にも家賃滞納者の増加により破産宣告を受けたオーナー様がいらっしゃいます。

  家賃を支払えない方およびホームレスの救済については相談にのるNPO団体があります。賃貸物件から力ずくで退去させられた等の違法行為が行われたことから退去した場合は、NPO団体の顧問弁護士が対応してくれることがあります。また、市区町村役場、都道府県庁の多くは相談窓口を設けています。

 国策や法律が間違っていると考えるのであれば政党、市区町村議会議員、都道府県議会議員、国会議員に提案し、法律や条例を改定してもらうしかありません。