最近の不動産価格上昇は、昭和バブルとは全く異なる

※おことわり

 本投稿には「筆者の予想」を書き下ろした箇所があります。何らかの突発事態が生じた場合、この投稿に記載した内容の通りにならないことがあります。

 本投稿の内容に従い投資判断、不動産の購入、売却等を行い損失が発生した場合でも筆者および筆者が勤務する有限会社大森不動産は一切責任を負いません。

本題

 最近、「不動産バブルが間もなくはじける」とか「間もなく不動産価格は大きく下落するので売却したいか迷っている不動産は今すぐに売った方が良い」などのWEB記事がよく見られます。

 また、著名な複数のインフルエンサーがYouTube上に「不動産価格は今後下がるから買わない方が良い」という内容の動画をアップしています。

 大都市では新築マンション・戸建住宅および土地の価格が凄まじく上昇しています。このため、「現在は不動産バブルであり、間もなく大暴落する」という論調が目立ちます。

 確かに昭和のバブル崩壊時に不動産価格は大暴落しています。しかし、そう遠くないうちに不動産バブルがはじけ、価格が大きく下がるかを予想するためには、不動産価格が上昇した原因を検証する必要があると考えます。

昭和のバブルとその崩壊

 アメリカにおける貿易赤字および財政赤字を解消するために、1985年に先進国で行われたプラザ合意により日本は大幅な円高ドル安を受けることになりました。1年間に1ドル240円から140円まで円高になったことから、いわゆる「円高不況」に陥りました。

 内需の拡大が必要になり、公定歩合の引き下げ、企業への融資拡大、規制緩和、公共事業の拡大が行われました。また、ドルの価値が目減りしたことから円が買われました。

 労働者の賃金が上昇し、内需が拡大して好況になり、多くの企業が大幅な利益を得ました。そして資金は日本の株式および不動産に集中して投資されるようになりました。

 金融機関からの融資による不動産の転売が盛んに行われ、特に大都市における土地の価格が暴騰しました。そればかりか海外の企業や不動産が日本企業により相次いで買付けられました。

 土地の価格が凄まじく上昇し、一般の国民には購入できないレベルになったことから国民の不満が増大しました。大きな社会問題になったことから国は土地売買に対する融資の総量規制を行い、土地の購入を目的とした融資を大幅に制限しました。さらに土地にかかる税金を高く設定しました。

 その結果、土地の転売が止まりましたが、転売目的で購入された土地の売却先が見つからない状況に陥りました。土地を高値づかみをした企業および投資家は安値での土地売却を迫られ、業績が急激に悪化し、経営破綻や破産が相次ぎました。融資先の企業が数多く倒産したことから多くの金融機関が破綻し、株価が暴落する事態になりました。

 最終的には企業や投資家が保有していた不動産および海外資産が借金の穴埋めのために大量に売り出される事態になりました。多くの企業で従業員の大量解雇や賃金カットが行われ、内需が大きく低迷しました。

 これが昭和のバブル崩壊です。その後は30年以上も続く大不況に突入しました。

令和における不動産価格の上昇

 昭和のバブル期における不動産価格の上昇とは原因が全く異なることに注意する必要があります。 

 新型コロナウイルス感染症の蔓延により緊急事態宣言が発令され、学校は休校になり、酒を出す飲食店では営業が大きく制限されました。百貨店やホームセンターなども閉店し、閉店期間は前例がないほどに長期化しました。

 数多くの飲食店が閉店し、経営者は損切りをした上で賃貸マンションや賃貸アパートを購入して賃貸住宅の運営事業を始めました。猛烈な勢いで買い上げが進んだことから特に収益用不動産と土地の価格が急騰しました。

 また、住宅用部材を生産している東南アジア等の工場の多くが閉鎖されたことから主に水回りの部材が入手困難になり、特に新築マンションの価格が上昇しました。

 追い打ちをかけたのがロシアーウクライナ間の戦争です。日本はロシアから非友好国と見做され、ロシア産の木材を輸入できなくなり、材木や合板の価格が急騰しました。

 令和において不動産価格が上昇した原因は長期のコロナ禍、およびロシア-ウクライナ戦争です。

 令和の不動産価格上昇は、昭和の価格高騰とは原因が全く異なり、内需拡大が背景ではないことに注目する必要があります。

今後の不動産動向

 大都市における収益用不動産は買われすぎの感があります。東京都区内における収益用不動産の表面利回りは5%未満のものが大半です。固定資産税等の税金、維持費を支払ったら利益をほとんど得られない物件ばかりになっています。

 また、飲食店に従事していた単身者が解雇されました。このため、都内の賃貸物件を退去して実家に帰った方が数多くいらっしゃいます。空室率が上昇し、私の会社がある目黒区では28%超です。

 単純に考えると、今後は収益用不動産および土地の価格が下がるように思えます。このため、インフルエンサーが「値下がり間近」の論調で動画を公開しているものと思われます。

 存在を忘れてはいけないのは外資系ファンドおよび外国の投資家です。ここ1年弱の間でかなり円安になり、1ドル110円前後であったものが一時は150円を超え、現在は132円前後です。

 外国人から見た場合、日本の不動産価格が爆下がりしたように見えます。このため、日本人の投資家が購入を控えている間に外国人による買い上げが進んでいます。

 外国人の投資家はキャピタルゲイン狙いであり、円相場が変動して円高になった際に高く売り抜けることを考えていると思われます。とすれば、当分の間、不動産価格は現状で推移すると思われます。

 ただし、国内で何らかの大きな天変地異が発生した場合、または台湾で戦争が勃発した場合には何らかの変動が生じると思われます。しかし、どのようになるか(上がるか、下がるか)は全くわかりません。