山口県阿武町の4630万円誤送金事件は不動産会社において他人事ではない
最近、新型コロナウイルス感染症に関する報道が減り、代わりにロシアのウクライナ侵攻が大きく取り上げられるようになりました。しかし、最近ではウクライナ侵攻に関する状況には大きな進展がなく、報道が減り始めていたところに山口県阿武町で4630万円の誤送金事件が発生し、大きく報じられています。
誤送金された先の若者は金銭に窮していたようです。海外のネットカジノで金銭を増やそうと単純に考えたのでしょう。既にオンラインカジノの口座に送金し、かなりの金額を溶かしたようであると報道されています。
海外のオンラインカジノで大きく儲けたという話は全く聞こえてきません。オンラインカジノの胴元はほぼ全てが詐欺師であると考えるのが世間の常識であると思いますが、このことを全く知らない無知な若者に誤送金され、溶かしてしまったようです。
生活に困窮し、手持ちの現金がなくなり困っているところに4630万円もの大金が転がり込んだらどうなるかを端的に示した事件です。この若者は「お金に関する知識」および「法律の知識」が全くなく、刹那的な誘惑に負けてカジノにつぎ込んでしまいました。
この若者を責める報道がとても多いのですが、根本の原因は阿武町の出納担当者が誤った送金指示をしたこと、および預金口座の仮差押えがかなり遅れたことにあります。誤った送金指示がなければもちろん、仮に誤送金の事実が発覚した後でも仮差押えを早期に申し立てていれば、4630万円ものの税金を溶かすことはなかったと思われます。
預金口座を仮差押えするための申し立ては、事案を把握してから2週間以上後に行われたとのことです。これほどまでに遅くなった理由ですが、町の幹部に「表沙汰にしたくない」という意識が働いていたとしか思えません。
この若者は電子計算機使用詐欺罪(刑法第246条の2)の容疑で逮捕されたとのことです。10年以下の懲役刑が規定されており、4630万円を溶かしたのであれば実刑になるかもしれません。罪名の妥当性について刑事裁判で争われると裁判期間が長期化する恐れがあり、この場合は判決が確定するまで長く勾留される恐れがあります。
4630万円は民法上の不当利得にあたります。民事裁判では町による返還請求を認める判決が下されることがほぼ確実です。しかし、オンラインカジノで溶かしたのであれば破産法が定める免責事由に該当しないので、自己破産が認められることはほぼないと考えられます。
4630万円を費消していた場合は「収入」と認められ、所得税がかかります。さらに勾留および懲役で返済できない期間が生じることから多額の返済利息が発生します。自己破産が認められない以上、一生をかけて少しずつ返済していくことになると思います。 件の若者は、阿武町の出納担当者のミスにより人生を台無しにしたと言えます。
不動産会社においては他人事ではない
不動産売買および管理の現場では、不動産会社は多額の現金を扱います。
不動産の売買または売買仲介において、買主が売主に代金を支払う際の支払方法として銀行振込が指定された場合、買主がATMまたはオンライン振込を利用することがあります。特に買主が法人の場合には、ATMやオンライン振込を利用することがあります。
不動産管理会社が入居者から送金された家賃を取り纏め、オーナー様に送金する場合も同様です。担当者が操作を間違え、誤送金が発生すると不動産会社や管理会社の対応が問題になります。
ATMまたはオンライン振込の際に操作を誤り、誤送金すると会社が倒産する原因になります。とても恐ろしいことを再確認させられた事件です。
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