西武H.D.、プリンスホテル等の売却話の先に見える問題

2022年2月15日

 各種報道によると、西武ホールディングスがプリンスホテルなどの約30施設を売却し、シンガポールの政府系ファンドが購入したのことです。

 NHK NEWS WEBの記事を引用します。

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※2月15日追記:リンク先の元記事が削除されたので、リンクを外しました。

プリンスホテルなど約30施設売却へ 西武HDが外資系に
02月06日 07時40分

私鉄大手の西武ホールディングスは、プリンスホテルなどおよそ30の施設を、外資系のファンドに売却する方向で調整を進めていることが分かりました。

新型コロナウイルスの影響で悪化した財務を改善する狙いがあるものとみられます。

関係者によりますと、西武ホールディングスは東京・港区にある「ザ・プリンス パークタワー東京」など国内で運営するホテルのほか、スキー場などのレジャー施設、合わせておよそ30か所をシンガポールの政府系ファンドに売却する方向で調整を進めています。

施設の運営は、売却後も、引き続きグループ企業が担い、ホテルなどのブランド名も維持していく方針で、売却額は、1500億円程度が見込まれているということです。

西武ホールディングスは、新型コロナの影響で鉄道やホテルの利用客が落ち込み、ことし3月までの1年間の業績予想で最終的な損益が140億円の赤字と、2期連続の赤字を見込んでいて厳しい経営状況が続いています。

こうした中、西武ホールディングスは、先月も傘下の建設会社の売却を発表するなど事業の絞り込みも進めていて、保有資産を削減することで悪化した財務を改善する狙いがあるものとみられます。

NHK NEWS WEB

 売却先は、シンガポールの政府系ファンドとのことです。シンガポールでは政府とファンドとが一体になって利益が出そうな事業に投資し、利益を得ています。政権幹部には投資に対する豊富な知識が求められ、ファンドと共に投資先を決定しているとのことです。

 間違いなく、新型コロナウイルス感染症が終息した後の将来を睨んでの行動です。コロナ禍が終われば、観光事業が復活し、観光地へのホテル需要が増加します。インバウンド需要も復活するでしょうから、日本人が宿泊しなくても、諸外国の富裕層を観光地に呼び込むことにより莫大な利益を得られます。

 今後はコロナ禍により財務基盤が弱った企業が所有する不動産や施設が外国のファンドに安く購入されることが続くと思われます。さらに都心の土地、一棟収益ビル等も外資に購入される物件が増えると思います。

 外国から見た場合、日本の不動産価格は安すぎると思われているようです。都心では不動産価格が急上昇しましたが、それでも安く感じるようです。

 前述したとおり、シンガポールで政権幹部になるためには投資に関する豊富な知識が求められ、政府とファンドが共同で投資先を決めています。日本でこのようなことを行うと「特定の私企業に政府が資金を供与して投資を行うのか」という異論が必ず出ます。このため、シンガポールのように政府がファンドと共同して投資先を選定することは非常に困難です。

 日本ではGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が年金積立金を利用した資産運用を行っていますが、基本的に株式および債券の売買による運用であり、不動産や企業の買収、売却を行うことはありません。このため、国内の観光地における不動産、施設等に投資することはありません。

 また、日本の政治家には必ずしも株式や不動産投資に対する知識が求められていません。これでは外国のファンドに日本の不動産および施設を安く買われるばかりです。本当にこれで良いのかと思います。