偽装免震ゴムを利用したタワーマンションが解体へ

西日本新聞の記事を引用します。
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偽装免震ゴム使用のタワマン解体へ 発覚後は交換と説明…住民「唐突」
2021/7/16 6:00 (2021/7/16 9:39 更新)
布谷 真基、福間 慎一

 2015年に発覚した東洋ゴム工業(現TOYOTIRE)の免震ゴムを巡るデータ改ざん問題で、国の性能基準を満たさない免震ゴムを使用していた福岡市中央区の賃貸タワーマンションが解体されることが分かった。偽装製品は大部分の使用物件で交換済みだが、解体に踏み切る異例の対応となる。ただ、管理会社などから決定に至る経緯の詳しい説明はなく、住民から困惑の声も上がる。

 マンションは同区港1丁目に立地。30階建てで06年に完成し、住居戸数は212戸。約4割(今年2月末)が入居しているという。改ざん問題発覚前の13年から大手デベロッパー系の投資法人が所有していたが、今月、別の会社への譲渡契約が結ばれた。

 物件の管理会社が今月、入居者に郵送した通知によると、問題の免震ゴムが使用されているため是正を求められているが、関係各所と協議を重ねた結果、解体せざるを得ないとの結論に至ったとしている。管理会社の代理人弁護士は取材に対し、「(解体は)ゴム交換工事を含め住民の負担が最小になる方法を検討した結果」と説明する。

 TOYOTIREは、問題発覚後、物件ごとに免震ゴムの交換・改修を進めてきた。対象となる154棟のうち、今年4月末までに149棟で着工し、148棟で作業を終えている。

 解体が決まったマンションの入居者からは「説明不足では」との声が上がる。50代の男性入居者によると、偽装発覚後に各戸を回った東洋ゴムの従業員から、「免震ゴムを取り換えるので安心してください」と説明を受けたという。その後、交換などの対応が済んだと思っていた。男性は「解体通知は唐突すぎて納得できない」と憤る。

 転居を強いられる住民の負担は大きい。別の女性入居者(34)には、来年6月までの退去を求める代わりに、6カ月分の賃料相当額を払うとの通知が管理会社名で送られてきた。敷金も全額返金されるという。女性は免震ゴムの交換ではなく、解体する理由が明らかにされない点に納得していない。「景色や立地が気に入って入居した人もいる。補償額も不十分ではないか。関係者はもっと説明を尽くして」と注文する。
~以下略~

西日本新聞

 入居者としては憤懣遣る方ないという心境でしょう。しかし、このタワーマンションは分譲マンションではなく、賃貸マンションです。このため、入居者が被る金銭的な損害は比較的少なくて済みそうであると言えます。

 このタワーマンションが分譲マンションであった場合には、区分所有権の資産価値は大きく下がるどころかゼロ査定とされたかもしれません。さらに、取り壊しには他の住民の同意が必要ですが、取り壊し決議が成立するための要件はかなり厳しいことから、取り壊しの決議が成立しないという悲惨な状況になった可能性があります。

 補償金として6か月分の賃料相当額が支払われ、敷金全額が返金されるとのことですが、安全ではないことが判明したことによる退去要請であると一応は解されます。このため、補償金の加算は交渉の余地があるかもしれません。

 万が一、地震が発生してこのタワーマンションが倒壊し、多数の死傷者が出た場合には建設会社および免震ゴムの製造メーカーは多額の損害賠償を請求されることから、解体を決断したのだと考えられます。

賃貸住宅では入居者の安全を重視することが必須
 最近、賃貸アパートのバルコニーや階段が崩落することによる死傷事故が発生しています。このような事故が発生するとオーナーや建築会社が多額の損害賠償を請求されます。

 賃貸借契約では、オーナーは入居者(賃借人)を安全に居住させる義務を負います。事情が何であれ、オーナーや建築会社の落ち度が原因で入居者が死傷した場合には損害賠償を請求されます。

 手抜き工事により事故が発生した場合には、必ず損害賠償を請求される世の中になったと言えますので、他社と比較して工事の価格が極端に安い建築会社に発注することは考えものであると言えます。

 品質が劣る、または耐久性のない部材を使用し、技術面において明らかに劣る職人に発注することがよくあり、後で大問題に発展することがあるからです。