「地上げ屋」について(その2)

地上げ屋はハイリスク、ハイリターン
地上げ屋というと暴利をむさぼる輩であるというイメージを抱く方が多いと思います。地上げ屋として活動すると必ず儲かると錯覚し、地上げ屋を始める不動産会社があります。

後述しますが、地上げ屋は成功すれば巨額な利益を得られるものの、リスクが極めて大きく、大手の不動産会社でも倒産した例があります。

狭小の住宅を数多く買い上げ、広大な区画の更地を作り上げ、マンションディベロッパーなどに転売する業者があります。しかし、都心では狭小の住宅地をまとめて購入して更地にしても、都市計画により高層建物の建設が許可されない場所が増えています。さらに狭小の住宅を数多く買い上げるにはかなりの日数を要します。このため、最近は大型商業施設や高層ビル、駅前をターゲットにする地上げ屋が増えています。

後者の地上げ屋は、大型商業施設や高層ビルの建設計画、鉄道駅前の再開発に関する情報等を事前に入手し、地上げの対象とする土地をピックアップします。建設予定地に隣接する土地、特に角地を購入し、「建設予定地に隣接する私どもの土地を購入すれば容積率がアップするので、より高層の建物を建築できます」とか「より広い建物を建てられます」等とアピールし、建築主に購入を迫ります。

事前に入手する情報の正確性、建築主の資力および資金調達力が問題
地上げの活動は、建物の建築計画が具体化し、建物の設計が始まるまでに終了させなければなりません。このため、かなり前から地上げの活動を開始する必要があります。

ところが事前に入手した情報が、いわゆる「ガセネタ」であることがしばしばあります。また、大規模施設等の建築計画が実際に立案されていた場合でも、何らかの理由により計画が突然中止になることがあります。

大規模施設建設予定地の近隣にある土地を片っ端から買い進めたのに、建設計画が白紙になると、地上げ屋は大損をします。下手をすると、会社の倒産や廃業を招くことがあります。

また、建築主の資力および資金調達力も問題になります。地上げ屋が施設の建設予定地に隣接する土地を購入し、転売しようとしても価格があまりにも高額であると、建築主の取引銀行(メインバンク)が隣接地の購入を許可しないことがあります。建築主から隣接地の購入を拒否された場合、隣接地を購入した地上げ屋は、土地を安く手放すしかありません。この場合も地上げ屋は大損をします。

以前、私の会社の近く(東急電鉄目黒線沿線)で大型商業施設が建設されるという噂が生じ、建設予定地と想定されるエリアにおいて猛烈な勢いで地上げが行われ、建物が撤去されて広大な更地が誕生しました。

しかし、大型商業施設が建設されるという話は、突然立ち消えになりました。いわゆる「デマ」であったようです。「デマ」を信じて地上げに走った、ある大手の不動産会社は倒産し、融資した銀行も巨額の不良債権を抱えることになりました。

地上げ屋はハイリスク、ハイリターンの商売であると言えます。