「マンションは管理を買え」は過去の常識

中古区分マンションを購入する際に、管理会社がどこであるかを気にする方がとても多いです。

「マンションは管理を買え」という常套文句があり、「管理会社があまり有名ではない区分マンションは購入しない方が良い」という言説が大手を振るっていました。しかし、この常套文句は数年前から過去のものになっています。

最近、管理会社を変更するマンションが増えています。マンションの管理会社が変わり、その後に管理を請け負った会社が杜撰な管理を行ったために廊下や階段、ゴミ置き場が荒れ放題になったところが増えています。

有名な管理会社が管理しているから大丈夫だろうと考えて中古マンションを購入したものの、管理会社が変わったために管理が杜撰になり、後悔されている方が増えています。

御承知の通り、中古区分マンションを購入された場合には管理費および修繕積立金を毎月支払います。どこのマンションでも、消費税の税率アップや不況の長期化により、管理費を安くして欲しいという声が居住者の間で増えています。

管理会社がマンションの分譲会社または販売会社の系列である場合は「管理会社変更」の決議には及び腰になります。ランニングコストの低減に向けた話し合いはしますが、「管理会社の変更」までは踏み込まないで済ませることがほとんどです。

しかし、分譲会社や販売会社とは無縁の管理会社が管理を行っている場合は、「より安い費用で請け負う管理会社に変えるべき」とする意見が居住者間で増え、その後に「管理会社を変える」という内容の決議が管理組合の総会等で可決され、管理会社が変わることがあります。

管理を安く請け負う管理会社は、管理の質を落とすことにより請け負うところが大半

・日勤管理を巡回管理にする。
・巡回の頻度を減らす。
・管理事務所における勤務はフルタイムではなく、半日またはそれ以下とする
・ゴミ置き場の管理は、最低限の内容しか行わない
・安い給与で働く管理員を配置する
・既に巡回管理であったところは、共有部分の清掃を週1日のみ行うことに変更

確実に管理の質が低下し、以下のような事態が発生します。

・廊下や階段の蛍光灯が切れてもなかなか交換されず、何日も放置される
・テレビアンテナに不具合が生じても、なかなか修理しない
・オートロックやエレベーターが故障しても、対応は管理人が次に出勤する日になる
・共有部の掃除が行き届かなくなり、汚なくなる。
・掃除をやり残した場合でも、時間が来れば清掃員が帰ってしまう。
・ゴミ置き場が荒れ放題になる(収集日ではないのにゴミが置かれる、分別されない等)
・管理人が病気等で休んでも、代わりの管理人が来ない

今度は居住者から「管理の質が落ちた」というクレームが発生し、管理会社に申し入れることになりますが、管理会社から請負費用の値上げを要求されます。値上げを拒否すると「利益が出ない」等の理由により管理業務の打ち切り(契約解消)を申し渡されることがあります。また、居住者が集団で管理人に怒鳴り込む等の、いわゆるパワーハラスメントを行ってしまうと、「クレーマーが多い」という理由で管理業務の解消を言い渡されることがあります。

「複数の管理会社を競争させれば良い」という考えは、現在の社会情勢では通用しない

管理を請け負っても「利益が出ない」とか、「クレーマーが多い」と判断された場合には、管理業務から手を引く管理会社が増えています。「価格競争をさせ、安く請け負う管理会社に依頼すれば良い」という、いわゆる競争原理は通用しなくなっています。

現在は、定年が延長されたことから安月給で満足する管理人がいなくなり、しかもコロナ禍であることから清掃業務を行う管理人のなり手がありません。安い給料で働いてくれる管理人を見つけられないので、質の良いサービスを管理会社に安い請負費用で提供させることは無理です。

安さを求めるあまり、管理会社を変更することに躍起になった結果、どこの管理会社も管理を請け負わなくなったマンションがあります。いわゆる「自主管理」のマンションです。

一旦自主管理になったマンションは、「居住者にクレーマーが多い」と見做され、どこの管理会社も管理を請け負わなくなる傾向があります。当然、管理の状態はどんどん劣悪になります。

「マンションは管理を買え」という常套文句は過去のものです。