不動産を購入する際に見落としがちな点(その2、土壌汚染・地盤他)

土地を購入する際には、その土地図面、面積、法規制の内容について不動産会社の宅地建物取引士から重要事項説明を受けます。しかし、重要事項説明の際に告知されていない瑕疵の存在が購入後に判明し、相談を受けることがしばしばあります。

売主および不動産会社のいずれも瑕疵の存在を知らなかった(善意)場合は、責任を十分に追及できない場合があります。購入を検討される方においても、事前にわかる範囲内で調べておく必要があります。懸念される点については不動産会社または売主に質問し、購入前に回答を得ることをお勧めします。

1.土壌汚染
以前に建っていた施設、構築物、建物が問題になります。クリーニング店の跡地は土壌汚染が見つかることが多い旨を記載している説明本やWEBサイトがあることから、これについてはご存じの方が多いと思います。

クリーニングの際に使用するトリクロロエチレン、パークロルエチレンは有害物質です。漏れ出て地下に浸透すると、土壌を汚染します。さらに付近の地下水を汚染し、近隣の井戸水が飲用不適になります。濃度を測定し、環境基準を超える場合は土壌の入れ替えが必要になります。

注意が必要なのはクリーニング溶剤だけではありません。町工場や印刷所が建っていた土地も要注意です。印刷にも有機溶剤を使用しますので、クリーニング店と同様の問題があります。

町工場の場合は、メッキ加工や金属加工などを行っていることがあり、重金属による土壌汚染がないかを確認する必要があります。注意が必要なのは、河川に沿って建設されていた町工場です。第二次世界大戦の前後、全国の主な都市には軍需工場の下請け、または孫請けの町工場が多数あり、金属加工やメッキ加工を行っていました。何故河川沿いに建っていたかというと、メッキ加工の際に生じる重金属を含む排水を河川に流すことができたからです。

当時には環境保護や土壌汚染防止という概念がありませんでした。法規制が整備されておらず、さらに軍需が旺盛であったことから河川の近くに町工場が多数建設されました。最近では小さな河川は暗渠化され、緑道が設けられているところが多いです。現在は住宅が多く建設されていることから土壌汚染には気付きにくい場所です。

以前に建っていた建物が住宅である場合も、その住宅が建てられる以前には町工場が建っていたところがあります。このような場合、土地の土壌汚染調査を行うと重金属が検出されることがあります。

小さな河川沿い、緑道沿いには注意が必要です。特に都区内の河川または緑道沿いの土地では重金属および有機溶剤に関する土壌汚染調査が必須です。

購入したい土地が河川または緑道沿いである場合は、売主に対し土壌汚染調査の実施を要望して構わないと思います。

2.軟弱地盤
河川に近い場所、または元々河川であった土地、海沿いに多いです。都区内では、緑道沿いで河川の存在が目立たない場合でも、地下30メートル程度まで沖積層に覆われている場所があります。このような土地に中高層の建築物を建てる場合は、地盤に届く長さの杭を打つ必要があります。

また、公図(地図に準ずる図面)の確認は必須です。土地上、または隣地に「水」と記載されている箇所がある場合は、現況が河川ではなくても、以前はその部分が河川であった可能性が高いです。当然ですが、「水」の記載がある土地の周辺では地盤が軟弱です。

3.地中埋設物
以前に建っていた建物を解体する際に、地中に残存している杭を抜かなかった、または抜けなかった土地があります。このような土地を購入した場合、建物を建てる為に杭を打つ際に支障が生じることがあります。杭を打ちたい位置に以前の杭が存在すると、新たに杭を打てないので問題になります。

また、廃棄物の集積場として利用されていた土地では、穴を掘って産業廃棄物を埋めていることがあります。建築残土と一緒に運び込まれたコンクリートの塊や店舗で使用していた大型冷凍庫や業務用調理器具、酷い場合は軽トラック等が地中に捨てられていることがあります。

土地の購入を検討している場合、過去に存在していた建築物、および何が行われていたかを徹底的に調査することをお勧めします。以前の建築物が住宅でも、その前に何が建っていたかを調べる必要があるかもしれません。