賃貸借契約更新の際における連帯保証契約の取り扱い(続き)

改正民法の施行により、賃貸借契約を合意更新で更新する際には、連帯保証人を引き受けられる方に対し、連帯保証債務を履行しなければならなくなった際における最大の負担額(極度額)を告知しなければならなくなりました。このことが、いくつかの問題を引き起こしています。

連帯保証人が極度額の告知を承知しない場合
昨日の投稿に記載したとおり、極度額の告知内容を承諾してもらえない方に、引き続き連帯保証人を引き受けさせることはできません。

この点を穏便に済ませたいとして、「極度額を告知せず、従来から連帯保証人を引き受けていた方に引き続き連帯保証人を引き受けてくれるようにお願いして欲しい」とオーナーまたは借主から頼まれることがありますが、改正民法は、極度額を告知することが必須であることを定めています。極度額の記載がない連帯保証人引受承諾書は無効です。対応策としては代わりの連帯保証人を立てるか、家賃保証会社を利用するしかありません。

ところが、代わりの連帯保証人がなかなか見つからないことがあります。通常、告知する極度額は二年分の家賃相当額(共益費などとの合計)になります。極度額の金額を聞いた途端に、連帯保証人の引き受けを拒む方が多くいらっしゃいますが、仕方ありません。

家賃保証会社が保証契約の締結を拒否することがある
連帯保証人が見つからない場合は、家賃保証会社に保証してもらうことになります。家賃保証を受けるためには保証料の支払いが必要になります。これだけでも借主の多くは不満になりますが、家賃保証会社が保証契約の締結を拒否することがあります。拒否されると、オーナーは大問題を抱えることになります。

家賃保証会社が保証契約を締結しない場合、その理由は過去における家賃滞納であるとは限りません。クレジットカード利用分の返済が滞った、自動車ローンの返済が遅延した等があると、保証契約の締結を拒否されることがあります。

また、賃借人がこの賃貸物件に入居した際には勤め先からの定期的な給与収入があったものの、その後に勤め先を解雇されたことから契約更新時に無職である場合も、保証契約の締結が拒否されます。現在はコロナ禍であることから、このような方が増えています。

この場合、不動産会社は他の家賃保証会社に打診しますが、打診した全ての家賃保証会社が保証契約の締結を拒否することがあります。

連帯保証契約、家賃保証契約のいずれも締結できない場合
オーナーは賃貸借契約を解約したり賃貸借契約の更新を拒絶できるかが問題となりますが、新たな連帯保証人が見つからず、かつ家賃保証契約を締結できない場合でも借地借家法が定める「賃貸人および賃借人相互の間における信頼関係を破壊したと認められる場合」には該当しないので、オーナー側から賃貸借契約を解約することは認められません。また、賃貸借契約の更新をオーナー側から拒否することも認められません。

オーナーは、連帯保証人不在のまま、家賃保証契約を締結することなく賃貸物件を貸し続けるしかありません。家賃が滞納された場合に、誰からも代位弁済を受けることは出来ません。契約更新後はオーナーにおいては極めて理不尽な賃貸借契約になりますが、仕方ありません。

改正民法の施行による混乱は、しばらくの間続くと思います。今後は家賃保証会社による保証契約を締結できることが、賃貸借契約を成立させるためには必須であると言えます。国土交通省(国)は連帯保証制度を縮小し、家賃保証会社による保証契約の締結に移行させようとしています。

今後、入居希望者が経済的信用を備えているかに関する調査は、家賃保証会社が行うことになると思います。友人や知り合いに連帯保証人の引き受けを依頼することは、極めて困難になったと言えます。