賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律について(その2)

昨日の続きです。昨日はこの法律の第28条について説明しました。
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律の骨格となる部分は以下の通りです。

1.サブリース事業者および勧誘者(簡単に言うと収益物件の建設を立案した不動産会社、建築会社等)において、以下の行為を禁止
①勧誘時において、著しく事実に相違する表示をし、又は実際のものよりも著しく優良であり、若しくは有利であると人を誤認させるような表示をするなどの不当な行為(第28条)
②不当な勧誘、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為(第29条)

2.サブリース業者と所有者との間に賃貸借契約が締結される前に、重要事項説明を義務づけ

3.賃貸管理事業者登録制度の創設
本法律の骨格部分

本日は1の②について説明します。これは本法律の第29条に規定されています。

賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律
(不当な勧誘等の禁止)
第29条 特定転貸事業者等は、次に掲げる行為をしてはならない。
一 特定賃貸借契約の締結の勧誘をするに際し、又はその解除を妨げるため、特定賃貸借契約の相手方又は相手方となろうとする者に対し、当該特定賃貸借契約に関する事項であって特定賃貸借契約の相手方又は相手方となろうとする者の判断に影響を及ぼすこととなる重要なものにつき、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為
二 前号に掲げるもののほか、特定賃貸借契約に関する行為であって、特定賃貸借契約の相手方又は相手方となろうとする者の保護に欠けるものとして国土交通省令で定めるもの
賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律 第29条

悪質なサブリース業者又は勧誘者(以下「サブリース業者等」という)が、誤った情報や不正確な情報による勧誘や強引な勧誘等、オーナーになろうとする者の意思決定を歪めるような勧誘や、同様の方法により契約の解除を妨げる行為を行うと、オーナーになろうとする者は契約に関する正しい情報を得られず、また、契約を締結するかに関する正しい判断ができない環境下に置かれます。この状況で契約を締結すると甚大な損害を被ることになります。

このため、本法律では、「サブリース業者等が、マスターリース契約の締結の勧誘をするに際し、又はその解除を妨げるため、マスターリース契約の相手方又は相手方となろうとする者(以下「オーナー等」という)の判断に影響を及ぼすこととなる重要な事項について、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為」、および「サブリース業者等によるマスターリース契約に関する行為であって、オーナー等の保護に欠ける行為」について禁止しています。

特に、故意に事実を告げず、又は不実のことを告げる行為を行った場合には6か月以下の懲役または50万円以下の罰金刑に処せられ、両者を併科することがあるとされています(本法第42条第2項)。

以下、この第29条が具体的に禁止する行為を箇条書きにします。

1.第29条第1項が具体的に禁止する行為
①故意に事実を告げない行為として禁止されるもの
・将来の家賃減額リスクがあること、契約期間中であってもサブリース業者から契約解除の可能性があることや借地借家法の規定によりオーナーからの解約には正当事由が必要であること、オーナーの維持保全、原状回復、大規模修繕等の費用負担があること等について、あえて伝えず、サブリース事業のメリットのみ伝えるような勧誘行為

・家賃見直しの協議で合意できなければ契約が終了する条項や、一定期間経過ごとの修繕に応じない場合には契約を更新しない条項(サブリース業者側に有利な条項があり、これに応じない場合には一方的に契約を解除される)があるのに、それを勧誘時に告げないこと

・サブリース契約における新築当初の数ヶ月間の借り上げ賃料の支払い免責期間があることについて、オーナーになろうとする者に説明しないこと

②故意に不実のことを告げる行為として禁止されるもの
・借地借家法により、オーナーに支払われる家賃が減額される場合があるにもかかわらず、断定的に「都心の物件なら需要が下がらないのでサブリース家賃も下がることはない」、「当社のサブリース方式なら入居率は確実であり、絶対に家賃保証できる」、「サブリース事業であれば家賃100%保証で、絶対に損はしない」、「家賃収入は将来にわたって確実に保証される」といったことを伝える行為

・原状回復費用をオーナーが負担する場合もあるにもかかわらず、「原状回復費用はサブリース会社が全て負担するので、入退去で大家さんが負担することはない」といったことを伝える行為

・大規模な修繕費用はオーナー負担であるにもかかわらず、「維持修繕費用は全て事業者負担である」等と伝える行為

・近傍同種の家賃よりも明らかに高い家賃設定で、持続的にサブリース事業を行うことができないにもかかわらず、「周辺相場よりも当社は高く借り上げることができる」等と伝える行為

・近傍同種の家賃よりも著しく低い家賃であるにもかかわらず、「周辺相場を考慮すると、当社の借り上げ家賃は高い」等と伝える行為

2.第29条第2項が具体的に禁止する行為
①特定賃貸借契約の相手方または相手方となろうとする者の保護に欠けることから禁止される行為
・マスターリース契約を締結若しくは更新させ、又はマスターリース契約の申込みの撤回若しくは解除を妨げるため、オーナー等を威迫する行為
威迫する行為とは、脅迫とは異なり、相手方に恐怖心を生じさせるまでは要しませんが、相手方に不安の念を抱かせる行為が該当します。例えば、相手方に対して、「なぜ会わないのか」、「契約しないと帰さない」などと声を荒げる行為、面会の強要、拘束などの相手方を動揺させるような行為が該当します。

・マスターリース契約の締結又は更新についてオーナー等に迷惑を覚えさせるような時間に電話又は訪問により勧誘する行為
「迷惑を覚えさせるような時間」については、オーナー等の職業や生活習慣等に応じ、個別に判断されるものですが、一般的には、オーナー等に承諾を得ている場合を除き、特段の理由が無く、午後9時から午前8時までの時間帯に電話勧誘又は訪問勧誘を行うことは、「迷惑を覚えさせるような時間」の勧誘に該当します。
電話勧誘又は訪問勧誘を禁止しているものであることから、例えば、オーナー等が事務所に訪問した場合など、これら以外の勧誘を「迷惑を覚えさせるような時間」に行ったとしても本規定の禁止行為の対象とはなりません。

・マスターリース契約の締結又は更新について深夜又は長時間の勧誘その他の私生活又は業務の平穏を害するような方法によりオーナー等を困惑させる行為
「オーナー等を困惑させる行為」については、個別の事例ごとに判断がなされるものであるが、深夜勧誘や長時間勧誘のほか、例えば、オーナー等が勤務時間中であることを知りながら執ような勧誘を行ってオーナー等を困惑させることや面会を強要してオーナー等を困惑させることなどが該当します。

②マスターリース契約の締結又は更新をしない旨の意思(当該契約の締結又は更新の勧誘を受けることを希望しない旨の意思を含む)を表示したオーナー等に対して執ように勧誘する行為として禁止されるもの
・「契約の締結又は更新をしない旨の意思」は、口頭であるか、書面であるかを問わず、契約の締結又は更新の意思がないことを明示的に示すものが該当する。具体的には、オーナー等が「お断りします」、「必要ありません」、「結構です」、「関心ありません」、「更新しません」など明示的に契約の締結又は更新意思がないことを示した場合が該当するほか、「(当該勧誘行為が)迷惑です」など、勧誘行為そのものを拒否した場合も当然該当することになります。

・オーナー等がマスターリース契約を締結しない旨の意思表示を行った場合には、引き続き勧誘を行うことのみならず、その後、改めて勧誘を行うことも「勧誘を継続すること」に該当するので禁止されます。同一のサブリース業者の他の担当者による勧誘も同様に禁止されます。

・電話勧誘又は訪問勧誘などの勧誘方法、自宅又は会社などの勧誘場所の如何にかかわらず、オーナー等が「契約を締結しない旨の意思」を表示した場合には、意思表示後に再度勧誘する行為は禁止されます。1度でも再勧誘行為を行えば本規定に違反することになります。