東京都区部、横浜市では不動産の値引き要求が困難

 ご承知の方が多いと思いますが、東京都区部、および横浜市の高級住宅街における不動産の価格が上昇しています。筆者の会社がある東京都目黒区ではここ数年の間に4割以上も上昇しているところがあります。

 コロナ禍になる前は新築住宅ディベロッパーを除き、売り出し価格の約5%迄であれば値引きに応じてくれる売主様が多くいらっしゃいました。ところが最近では客付け側の不動産会社が値引きをお願いしても値引き要求に応じない売主様が増えています。特に売主が不動産会社である場合、この傾向が顕著です。

 言うまでもなく、原因はコロナ禍が異様に長期化したことにあると考えています。

 コロナ禍の間は経済活動が停滞し、業種を問わず大きなダメージを受けました。内部留保がある企業はこれを取り崩しています。最近、経済活動が少しずつ元通りになる気配があります。しかし、不動産の売主様も多かれ少なかれダメージを受けており、値引きをする余裕がなくなっているものと思われます。

 東京都区内で価格1億円の不動産が売買される際に5%の値引きを求めると値引き額は500万円になります。コロナ禍の前は、500万円の値引き要求があればこれを認め、即時に契約を成立させることが優先されてきました。

 しかし、最近は「500万円もの値引きはできない。満額で購入してくれる他の買主様を探そう」という考えが支配的になっているようです。特に都心や横浜市内の高級住宅街等にある物件の売主様に値引きを求めると、即時に取引を断られることが増えています。

 最近、筆者の会社が物件価格の1%弱の値引きを求めたところ、売主様から「買付はお受けします。しかし、契約までに満額で購入されるお客様が現れた場合は、そのお客様を優先しますのでご承知置きください。」と回答されました。

「値引き要求を受けると自社が存続できなくなる」という考えが一般化

 コロナ禍の長期化だけではなく、円安による輸入品の価格上昇、ロシアーウクライナ戦争等が経済状況を悪化させています。各企業が受けているダメージを減らすためには「値引きを断る」ことが一番合理的かもしれません。

 値引き要求に応じていた問屋や小売店が多かったのは過去の話です。「他業者に乗り換えられたら困る」として値引きに応じる対応から「乗り換えても構わない」という対応に変わりつつあります。

 多くの業者が一斉に値引き要求を拒否し、過去の値引き分も含めて値上げしたために諸物価が一気に上昇したものと思われます。

 不動産についても例外ではありません。今後、特に都心、高級住宅街、駅近の物件では値引きを拒否される物件が増えると思われます。ポータルサイト等に掲載されている物件価格からの値引きを期待できない物件が多くなるので注意が必要です。