不動産に関する詐欺について(その1)

 昨日の投稿では手付金の受領に関する詐欺について書きました。不動産に関する詐欺の手法はその他にも数多くあります。

1.地面師
 地面師については、このブログにおいて過去に詳しく投稿しています。
 地面師とは、不動産の所有者または所有者の代理人とは無関係であるにもかかわらず、不動産の所有者または所有者の代理人であると偽り、不動産の売却を持ちかけて多額の金銭を騙し取る輩のことをいいます。

 品川区五反田の元旅館における地面師詐欺事件では積水ハウスが騙されました。大手の不動産会社でも被害に遭うことがあります。地面師グループは身分証明書や印鑑証明、登記済権利証、固定資産評価証明等を偽造し、売主側の人物と称する複数の人物が登場し、話術も巧みであったことから騙されたようです。

 また、騙し取る対象を手付金に限定した地面師が存在します。主に非公開物件の売買において地面師が登場しやすいです。売主側の不動産業者が騙されている事案がよくあり、一般のお客様でも騙される恐れがあります。非公開物件を購入する際には特に注意が必要です。

2.原野商法
 主に1970~80年頃に多発した、原野の売買を内容とする悪徳商法です。売れる見込みがほとんどない北海道や東北地方の山林および原野を「将来は開発されて値上がりする」「転売すると儲かる」「近くに新幹線の新駅が出来ることになったので値上がりする」などの嘘を言い、購入させる商法です。

 最近、また原野商法が復活している感があります。老後に備え2,000万円を貯める必要があるとか、副業をした方が良い等の風聞が、庶民を不動産投資に向かわせています。不動産投資をしたいといっても、東京の近郊で1棟もののアパートを購入するには数千万円以上の費用を要します。1棟もののマンションでは3億円以上を要します。

 「原野の購入は少額でも可能です。」といわれ、アパートなどの収益用不動産を購入できない方が騙されて購入してしまう傾向が見られます。

3.多重債務者に収益用物件(区分マンションが多い)を購入させる詐欺
 多重債務者に対し区分の収益物件(ワンルームの区分マンション等)を購入させる詐欺です。加害者は質の良くない不動産会社です。被害者は多重債務者である買主、および事業用ローンを提供する金融機関です。

 「事業用ローンを利用してワンルームの区分マンションを購入すれば、毎月の返済額を少なくできます。金融機関からは実際の物件価格よりも高い金額を借りるので、差額を元金の返済に充てられます。さらに家賃収入で債務を返済できます。」という甘言を言い、多重債務者を騙します。

 不動産会社の営業担当は、金額の異なる二通の契約書を作成します。高い金額を記入した契約書を金融機関に提出し、実際の購入価格を記載した契約書は物件の売主に渡します。いわゆる「かきあげ」を行うわけです。さらに、質の良くない営業担当は、融資を受ける金融機関に提出する収入証明書類等も偽造します。

 しかし、事業用ローンの返済は長期間です。その間に、ほぼ確実に「かきあげ」が発覚します。入居者が退去して空室になったことから家賃収入を得られなくなり、事業用ローンの返済が滞った際に発覚することが多いと思われます。

 「かきあげ」に基づいて金銭消費貸借契約が締結されたことが発覚した場合、金融機関は契約を解約します。解約により、買主は事業用ローン返済における期限の利益を喪失することから一括返済を求められます。もちろん、ほとんどの買主は返済できません。

 最終的には競売や任意売却により安価で売却することを迫られ、足りない部分は借金として残ります。そればかりか、金融機関が被害届を警察署に提出して立件された場合は買主は詐欺罪に問われます。詐欺罪の成立が認められた場合は懲役刑が科されます。なお、詐欺罪には罰金刑の規定がありません。