事業を行うことが認められない土地に注意

 事業を行えるビルや事務所の購入を検討している方から「○○区の△△町□丁目に限定して探して欲しい。」などの要望を受けることがあります。

 エリアを限定する理由としては「近くにショッピングセンターがないのでミニスーパー等に対する需要がある。」等と言われることがよくあります。しかし、用途地域が定める制限により事業を行えないエリアであることがあります。

 第一種低層住居専用地域または第二種低層住居専用地域に指定されている区域では事業に厳しい規制があります。原則として「店舗兼住宅」または「事務所兼住宅」しか認められません。

 例えば飲食店の場合は店舗部分の床面積50㎡以下、建物の延べ面積の2分の1未満、かつ2階以下にする必要があります。そして住宅が併設されており、原則として住宅のオーナーが店舗または事務所を営んでいることが必要です。

 当該建物を住宅として利用する者が誰もいない場合は、店舗または事務所の開設は認められません。従って、法令により店舗・事務所における人の居住が認められない不動産会社、薬局等は原則として開設できません。

 第一種低層住居専用地域および第二種低層住居専用地域では、人が居住しない場合でも事務所の法人登記は可能と思われます。しかし、宅地建物取引業法免許や薬局開設許可、古物商の営業許可を申請する際は必要要件を満たすかを厳格に調査されます。

 事務所の所在地が第一種低層住居専用地域および第二種低層住居専用地域内である場合、申請は却下されます。宅地建物取引業、薬局、古物等は第一種低層住居専用地域または第二種低層住居専用地域以外のエリアで開業する必要があります。

 第一種低層住居専用地域における薬局開設について建築審査会が認めた事例があります。しかし、これは極めて例外的なものと考えられます。

 また、市街化調整区域では更に規制が厳しく、地元の住民に対するサービス提供や日用品の販売、修理業以外はほぼ認められません。

 飲食店の開業はほぼ無理です。既存の自宅を改築し、飲食店等の店舗を設けることも認められません。営業していることが発覚した場合は都道府県庁や自治体からお尋ね文書が届き、閉店を指導されることが多いです。

不動産会社を通さない個人間売買は危険

 不動産会社を通さず、個人間売買にて土地を購入する場合、上述した事業の許認可条件を見落とすことがあります。自宅を購入した方が脱サラをして自宅で飲食店を開業する、各種士業を開業する等の際に大きな問題になりますので要注意です。

 最近、WEBサイトに「不動産会社を通さない個人間売買で手数料を節約するべき。」などの記事が散見されます。しかし、不動産会社における仲介手数料にはこれらの調査に関する費用も含まれています。

 購入目的が事業の開始であれば、不動産会社が当該事業を行えない土地を紹介することはまず考えられません。事業用建物を建設できない土地であれば、不動産会社は重要事項説明の際にその旨を必ず説明します。

 また、不動産会社を通さないと買主が売主に契約不適合責任を追及しにくくなるなど、不利な状況に陥ることがあります。土地の売買契約を締結した後に所有権移転仮登記の存在が判明したり、地中に大量の産業廃棄物が見つかる等があります。

 土地の個人間売買は高値づかみをさせられることがあります。

 また、瑕疵の存在を売主が知らなかった場合、買主は売主の責任を追及できないことがあります。不動産会社が取引に介在していれば瑕疵の存在を事前に知り、取引を中止できたと思える事案が数多くあります。

 仲介手数料の支出を惜しみ、不動産会社を通さずに土地の個人間売買を行うことは多額の損害を被ることに繋がります。不動産会社を通さない個人間売買はお勧めしません。