宅地建物取引士資格試験(宅建試験)について

不動産会社を経営していると、宅地建物取引士資格試験に関する質問をたまに受けます。

主な質問内容は、「定年退職後に不動産会社を立ち上げたい。50歳以上でも合格できるか?」、「勉強しなければ合格できない試験か」、「実務経験がなくても合格できるか」、「登録実務講習は難しいか」、「登録および免許申請に各々40日前後という長期を要する理由」等です。

今日は、このあたりについて解説します。

昨日の投稿に書いた通り、この試験は一年に1回しか受験できません。試験は4肢択一問題50問が出題され、試験時間は2時間です。

不動産業に従事し、従業者証明書を所持している方のみが受講できる「登録講習」を受講し、修了試験を合格した方は、4肢択一問題45問が出題され、試験時間は1時間50分です。そして5問については全問正解したものとして扱われます。

この「登録講習」は、宅建試験に合格したものの2年間の実務経験がない方が「登録」を受けるために受講する「登録実務講習」とは異なります。「登録講習」は国土交通省が指定する指定機関において受講できます。

登録講習の詳細は、こちらのWEBサイトを参照願います。

合格するためにはある程度の勉強が必要
ここ数年における合格率は、全受験者の17%前後です。難易度は平成17年頃から急激に難化した感があります。特に難しいのは民法および借地借家法です。試験に合格するためには民法および借地借家法の理解が不可欠です。

この試験は、ある程度の勉強をしなければ合格できない試験と言えます。参考書や過去問を用いた自宅学習、資格試験予備校へのスクーリング、模擬試験の受験等の学習方法がありますが、一定の時間を割いて勉強する必要があります。

仕事が忙しいと、どうしても勉強する時間が無くなります。前述した「実務講習」を受講していても、不動産会社に勤めている方が必ずしも有利になるとは限りません。

不動産業の実務経験がなくても合格できる
問題の多くは、法令に関する内容です。このため、不動産会社に勤務して実務に携わっていることが有利に働くことはそれほど多くありません。

このため、不動産業に従事していなくても、勉強をしていれば合格できる可能性が極めて高いといえます。

若いときに受験するのが有利
受験資格に年齢制限はありません。しかし、法令に関する出題が多いので、暗記力が強い方が有利になります。若いときに受験した方が合格する可能性が高いと言えます。

定年後に不動産業を開業する、または不動産業を家業としている方が将来において不動産業を引き継ぐことが想定される場合は、できれば若いうちに受験して合格することをお勧めします。

登録実務講習の難易度
最後に試験があるので気になる方が多いです。しかし、スクーリング期間の開始前に講習内容のDVDが配布されますので、これに基づいた予習を行っておけば、大半の方が合格できるレベルです。

仮に不合格になっても、追加で一回のみ別の日程でチャレンジできる講習機関があるようです。なお、登録実務講習のやり直しであり、スクーリングからやり直す必要があるかもしれません。不合格の際には個別に説明があると思われます。

登録および免許申請に各々40日前後の日数を要する理由
「登録」については申請した一人一人について、宅地建物取引士になるための欠格要件に該当しないかを調査しているとのことです。

調査項目としては破産者ではないか、反社会的勢力に属していないか、懲役・禁錮・一定の罪状による罰金刑に服した前科がある場合には刑の執行が終了(または時効が完成)してから5年を経過しているか、過去に宅建業法違反で立件されたことがないか、その他ではないかと思われます。

宅地建物取引業免許の申請においても、欠格要件の有無を個別に調査しているとのことです。法人の場合は役員の中に欠格要件に該当する者がいないか、免許申請に際し宅地建物取引業協会または全日本不動産協会に入会済で60万円の供託金を納付しているか、または地方裁判所に1,000万円を供託しているかについて調べているとのことです。

調査内容の詳細は公開されていませんが、日数を要する理由は厳格な調査を行っているためであると言われています。