木造戸建住宅、安易に間取りを変えてはいけません

 お客様から「木造戸建住宅に長年生活しているが、不便なので間取りを変えたいと思っている。」と相談されることがあります。狭小なキッチンを撤去して大きなリビングを設けたい、浴室を広くしたい等、御要望は様々です。

 最近は大きなリビングダイニングキッチンやアイランドキッチンが設けられている戸建住宅が増えています。しかし、古い住宅ではそのようなキッチンは設けられていないので、憧れを抱く方が多くいらっしゃいます。

「木造住宅の場合、柱や梁を撤去すれば簡単に間取りを変えられる」は誤り

 あるお客様から中古戸建住宅の売却相談があり、訪問したら古い建物であるにもかかわらず広いリビングが設けられていました。ところが、本来であれば柱が設けられていても良い箇所に柱がなく、梁も見当たりません。事情を尋ねたら、広いリビングを設けるために工務店に柱と梁とを撤去してもらったと言います。

 間取りを変えたいということで工務店の棟梁と相談したら「柱と梁を撤去すれば広いリビングを設けられます。」と言われたとのことです。「簡単にできます。」と言われたことから柱や梁の撤去をお願いし、リビングを広くしたとのことです。

 この工事が行われたことにより建物の耐震性は大きく損なわれたことが確実です。もちろん、売却する際の建物の査定価格は大きく下がります。最も大きな問題は、大地震の際に倒壊する恐れがかなり高い危険な建物と評価するしかなく、買い手が付かないことです。

 建築確認申請および完成検査を行った木造戸建住宅では建築士が建物の構造計算を行っています。柱や梁を安易に撤去すると、建築士が想定した耐震性能を確保できなくなります。

 「木造住宅の場合、柱や梁を撤去すれば簡単に間取りを変えられる。」と思われている方がかなり多いですが、全くの誤りです。

 このような工事を安易に請け負う工務店は非難されても仕方ないと思いますが、工務店を責めて済む問題ではありません。工務店の棟梁の多くは「お客様の要望通りに工事をするのが自分たちの仕事。」と考えています。工事により耐震性が劣ることを知っていても、お客様から強く要望されれば断り切れないことがあるのも事実です。

 間取りを大きく変えるリフォームを行う際は、耐震性が損なわれないかを工務店によく確認することを強くお勧めします。