EV車(電気自動車)は本当に普及するの?

 ご承知の通り、EV車(電気自動車)は走行中に排気ガスを出しません。東京都では2025年4月から新築の建築物にEV充電設備の設置を義務づける条例(改正環境確保条例)が施行されます。新築マンションでは駐車場台数の2割以上の数の充電設備を設置しなければならなくなります。

 既存のマンションにおける多くの管理組合でもEV充電設備を設置するかについての検討が進められているようです。しかし、2023年8月の時点ではEV車が普及しているとは言えません。補助金制度がありますが、それでも「設置は時期尚早である」と判断する管理組合が多いようです。

 EV車が普及していない理由は車両価格が極めて高額であり、充電に長時間を要し、充電後の走行可能距離が短いからです。使用される電池は主にリチウムイオン二次電池、またはリチウムイオンポリマー二次電池ですが、これらの電池には寿命があります。電池を交換する費用はかなり高額であり、廃電池の処理方法も確立されていません。これらも問題です。

 最も大きな問題は、全ての車両をEV車に置き換えると莫大な電気が日常的に必要になる上に、膨大な量のリチウムが必要になることです。

 現在でも特に夏は電力不足になりやすく、節電が要請される状況です。福島第一原子力発電所の事故があったことから原子力発電所の新設は絶望的な状況です。太陽電池パネルを数多く並べたとしても、国内の全ての自動車をEV車に置き換えるのに必要な電気量を賄うことはできません。

 リチウムはオーストラリア、チリ、中国で主に産出されます。その他にはボリビア、アルゼンチン等も埋蔵量が多いと言われていますが、生産国が限られています。日本国内では産出せず、輸入に頼るしかありません。このため、国際情勢が変化した際に電池を供給できなくなる懸念があります。

 温暖化が世界的に進行しているのは確かです。しかし、「地球温暖化の原因は温室効果ガスの排出量が増えたから。代表的な温室効果ガスは二酸化炭素。」とする学説が一人歩きし、EV車の導入促進策に繋がっているようです。

 リチウムを精錬する際には大量の鉱滓が発生します。電池を生産する際には大量の水が必要であり、工場では大量の二酸化炭素を発生させています。確かに電気自動車の走行時には二酸化炭素を発生しませんが、電池の生産工程は決してクリーンではありません。

 日本は発電能力に限界があり、リチウムを産出しません。あくまでも筆者の個人的な見解ですが、日本の全ての車両をEV車にすることは極めて困難(というか無理)であると考えます。

 東京都の改正環境確保条例は時期尚早であり、再び改正されることになると思います。