運転免許証単独では身分証明書として通用しなくなる?

 最近、偽造した運転免許証を利用した犯罪が急増しているとの報道があります。携帯電話会社を訪れ「スマートホンを紛失した」と偽り、偽造した運転免許証を提示して他人名義のSIMカードを再発行させる事案が増えています。

 犯人は、再発行されたSIMカードを自分のスマートホンに装着し、被害者のスマートホンを完全に乗っ取ります。さらにインターネット銀行口座にアクセスし、預金や暗号資産を自分や仲間の口座に不正に送金します。一連の手口は「SIMスワップ」と呼ばれ、世界中で被害が発生しています。

 いわゆる「闇バイト」による強盗事犯が大きく報道されています。SIMスワップの犯人が闇バイトで募集された者であったという報道があります。

 運転免許証の偽造を行っている輩は、いわゆるダークウェブにおいて依頼者を募っているとの噂があります。

 これまで、代表的な身分証明書として運転免許証が利用されてきました。しかし、偽造が増えると運転免許証のみでは身分を証明したことにならなくなる恐れがあります。

 既に大手都市銀行や一部の通販サイトでは、運転免許証の提示のみでは身分を証明したとは扱わないことにしています。

 ある大手都市銀行では、インターネットバンキングの利用を開始する際は運転免許証をスマートホンで読み込ませ、さらに暗証番号(8桁の番号)を当該銀行のWEBサイトから入力するように求めています。

 Apple社ではiPhoneを買い替える際にiPhoneの下取りを行っています。下取りを依頼する場合は運転免許証の画像提供だけでは足りず、住民票等の画像提出を求めています。

不動産会社では運転免許証のみで身分が証明されたと扱うが、今後は通用しない?

 今後、不動産取引の際には運転免許証の提示を受けるだけで身分が証明されたと扱う、現行ルールで良いのかという問題があります。

 売買、賃貸のいずれでも不動産取引では契約書を作成します。不動産売買では買主の住所および氏名が登記簿に記載されます。誰が契約当事者であるかは重要です。住宅ローンを利用する場合に本人確認が絶対に欠かせないことは言うまでもありません。

 現在、不動産売買の際は、犯罪収益移転防止法の定めにより身分証明書の提示による本人確認を行います。この法律では、運転免許証やマイナンバーカードの「提示」により身分が証明されたと扱います。しかし、特に運転免許証は偽造が多いので、今後は法改正されるかもしれません。

 不動産会社において身分確認を行う方法ですが、スマートホン内蔵のICカードリーダーで運転免許証を読み取り、真正な運転免許証(またはマイナンバーカード)であるかを確認することになると思われます。既に対応アプリが存在します。

 法改正が必要なので直ちに実施されることはないと思います。しかし、不動産会社としては暗証番号を思い出せない方からのクレームが想定されるので良い話ではありません。

 ダークウェブにおいて運転免許証を偽造する輩のために、とんだとばっちりを受けることになるのかもしれません。