不動産競売、元所有者との明け渡し交渉は必ず複数人で

 地方裁判所が開催する不動産競売において不動産を落札した場合、各種手続きを済ませて所有権移転登記をします。その後は明け渡しに向けた交渉を元の所有者と行います。

 元の所有者が行方不明の場合は裁判所の民事部書記官や執行官と相談の上、強制執行手続に移行することが通常です。

 しかし、元の所有者が競売で購入した不動産に居住し続けていることがよくあります。この場合は元の所有者と明け渡しに向けた話し合いをします。不動産競売が初めての方が犯しやすいのは、一人で元の所有者のところに出向くことです。

 交渉の場に占有屋や反社会的勢力の構成員が待機しており、威圧的に罵声を浴びせて脅すことがよくあります。明け渡して欲しければ法外な金額の金銭を支払うように求めることがよくあります。裁判所に強制執行手続を依頼している場合は、強制執行を取り上げるように迫ることがあります。

 断ったらどうなるかは想像にお任せします。多くの場合に想像通りの結果になります。このため、落札者が一人で元の所有者のところに出向くことは絶対に避けてください。

 自分一人しかいない場合は警備会社と相談し、警備員の同伴を求めることをお勧めします。有料ですが仕方ありません。

 占有屋や反社会的勢力の構成員の求めに応じ、金銭を渡すと「カモだ」と思われ、更に多額の金銭を要求されることにつながります。

 交渉の場に元の所有者とその家族以外の第三者が居合わせた場合は直ちに交渉を打ち切り、強制執行手続を取ることをお勧めします。交渉を打ち切った後に、元の所有者から明け渡しの相談をしたい旨を告げられても一切応じてはいけません。

 交渉の前に、電話などで「交渉の場に元の所有者と家族以外の者がいた場合は直ちに交渉を打ち切る。」と伝えておくことが有効です。

明け渡しの当日も警戒するべき

 明け渡し日には鍵と所有権放棄書を受領します。その際に一人で元の所有者のところに出向くことは絶対に避けてください。

 筆者の経験ですが、鍵を受領した直後に元の所有者が突然逆上し、刃物を持ち出されたことがあります。説得して事なきを得ましたが、明け渡しの当日も十分に警戒するべきです。