不動産競売の公告が公開されている不動産を任意売却で購入できるか

 地方裁判所が不動産競売の開始を決定すると執行官が物件を訪問し、写真を撮影します。居住者がいる場合は占有関係および近隣トラブルの有無などの諸事情を聴取します。同時に不動産鑑定士が鑑定評価を行い、売却基準価額を算出します。

 売却基準価額とは、裁判所が希望する最低の売却価格のことです。入札の際には売却基準価額から20%差し引いた額以上の金額で入札する必要があります。東京都23区内において条件が良好な物件では、落札価格が売却基準価額の2倍近くになることがよくあります。

 立地や地形が良好である物件、駅から物件までの道が平坦である物件等の場合、「競売が実行される前に確実に手に入れたい。」として「競売が実施される前に任意売却で購入したい。現在の所有者と物件購入に向けた相談をしたいので、仲介してもらえないか。」という相談をいただくことがあります。

不動産競売が公告された後に、東京都内の物件を任意売却で購入することは無理に近い

 東京都内の物件では、ほとんど無理であると言えます。その理由は、不動産競売開始の公告がなされた後では開札までの期間が短かく、抵当権または根抵当権者である金融機関やサービサーにおいて任意売却物件としての購入を受け入れるか否かを検討する余裕がないからです。

 任意売却物件として購入する場合は、最低でも不動産競売が公告される1か月以上前に交渉を開始しないと交渉をまとめることが困難です。抵当権者や根抵当権者が複数存在する場合は全ての権利者から個別に承諾を得る必要があり、相応の日時を要するからです。

 また、抵当権または根抵当権者である金融機関やサービサーにおいて、「不動産競売に持ち込んだ方が高値で売却出来る可能性が高い」と考える場合は任意売却を許可しません。

大都市以外の物件では可能な場合がありますが..

 大都市以外の物件では、裁判所による不動産競売が公告されてから開札されるまでの間にかなりの期間が設けられていることがあります。特に過疎地では入札希望者が少ないことから、公告日から開札日迄の期間が長めに設定されています。

 この場合、抵当権または根抵当権者である金融機関やサービサーとの間における交渉期間を確保できるのですが、ローンに関する問題があります。通常、ローン審査には2~3週間を要し、審査の結果、融資不可になることがあります。このため、ローンの利用を希望される方は門前払いになります。

 大都市以外の物件を任意売却で購入したいと相談された場合、私は「ローンを利用せず、全額を現金一括払いで購入することが必要です。可能でしょうか。」とお尋ねすることにしています。

 ほとんどの方は「ローンは利用できないのですか。」と言われます。「不動産競売が行われる旨が公告されている任意売却物件を購入する場合は、物件を差し押さえている金融機関などにおいてローンの審査期間を待つことができないのでローンを利用できないとされています。」とお伝えしています。 

 なお、抵当権者または根抵当権者である金融機関やサービサーが「不動産競売に持ち込んだ方が高値で売却出来る可能性が高い」と考える場合も任意売却を許可しません。このあたりは大都市の物件と同様です。

 「大都市以外の物件に限り、現金一括で購入するのであれば任意売却物件として購入できる可能性がある」程度に考えておくことでよいと思います。